2017年12月22日金曜日

!と?のスイッチ⑨ 造形素材バンクとブリコラージュ






6年生 ブリコラージュの時代

「ブリコラージュ」というフランス語があります。
「ありあわせの道具と材料を用いて自分の手でものをつくる」という意味があります。
それは、まさに「ものづくり」の楽しさであり、
大げさに言えば、生きていくことを支える
知恵であり、喜びではないかと思います。

一から十まで、つくることの作業工程が決められ、
しかも、何をつくるのかまで決められているような
ものづくりを、子供のうちからしていたら、
「もう二度とものづくりなどするか」とあきれられてしまいます。
それに比べて、ブリコラージュは、きまぐれで自由。
ものづくりをとにかく楽しむこと。

さあ、今日の材料はこれ。
これは、なんでしょう?
6年生に訊ねると、すぐに「革」という答えが返ってきました。

そう、これは動物の革。
私が上履きとして使っている革靴をつくっていただいた革作家さんから、
ご好意で譲っていただいたのです。

ありとあらゆるリユース素材が町中から集まってくる図工室ですが、
革は、これまでなかった貴重な素材です。

さっそく、使いたい革を物色する6年生。
やはり、本物を前に、真剣な表情です。

本物の材料だからこそ、
無駄にはできないと、真剣に向き合います。

革は、
穴あけポンチで穴を開け

カシメを入れて

ハンマーで叩いて繋げるという

とてもシンプルな操作の繰り返しで、
つなげて、広げていくことができます。

どうつなげるか?何をつくるか?
つくりながら自分で発見することを、
保障したいと思います。

自分なりに方法を考えて、自分流につくってみる、
その楽しさを奪ってはいけないのです。

「わかった!」「できそう!」「やってみたい!」
それが、ものをつくることの原点。

誰に教わったでもなく、自分が考え出した方法。

でも、おもしろいことに、
「どんな形を目指しているの?」
と聞くと、決まって返ってくる答えが
「わかりません。何も考えていません。」

「何も考えない」でもものがつくれる。
むしろ、ものづくりに、思考がじゃましたりするのです。

このようにして、2回で合計150分の時間はあっという間に終わり、
自分でも思いもよらないものが生まれました。
「これ、普通にこれから使います!」

自分で使うものを、自分でつくること。

消費社会の中にあって、
自分が生産することの喜びを味わう体験は、
なかなか意味のある体験ではないか。


大量生産・大量消費の時代に終わりを告げて、
さあ、ブリコラージュの時代を生きよう。

2017年12月20日水曜日

5年生 自分で見つけた問いと答え 図工ラーニングのすすめ

5年生が椅子をつくっています。
椅子=自分が座るもの、
つまり自分の体重を支えるものをつくる
という難易度の高いミッションを前に、
5年生は本気で取り組んでいます。

つくりながら、どれだけの思考力をはたらかせているかわかりません。
だって、「できた」と思って座ってみたら、
椅子が潰れてしまったら、元も子もないのですから。

つくりながらどれだけの判断力をはたらかせているかわかりません。
自分で注文書を書いてせっかく買った材料なのに、
使えないものをつくったら、自分が損するわけですから。

つくる中で、子供には無数の「気付き」があります。
こうしたらいいのか!
こうやってつくればいいのか!
こうしたらもっとよくなるんだ!
というように。

つまり、自分の「課題」を発見するのです。
自分が達成すべき課題を、自分自身で見出すのです。

「自分で」
ということが何より重要です。
誰かにいわれたわけでもなく、決められたわけでもなく、
自分で見出すということ。
自分で決めたことは、自分でなんとか解決したくなるのが、人の心理です。。

大人が手を出そうものなら、
手を跳ね除けて、
「触らないでください。自分でやります。」と言われてしまいます。

自分が見つけた課題
つまり、自分が自分に課したミッションを
自分の力でどうにかしてクリアする。
「課題解決力」が、湧き出してきます。

課題解決の鍵は、
自分自身のこれまでの経験であり、
自分自身を変革させる、新しいチャレンジです。

「こんな方法で、こんなことができた!」
新しい自分との出会いです。

大切なのは、誰かにいわれたやり方をなぞることではなく。
自分自身のやり方で挑戦することなのです。

課題の解決に向けて、一人一人が挑戦を繰り返しました。

***
そして、ついに椅子ができあがりました。
学校の屋上で、野外展示会をしました。

一人一人が自分で考えた答え。
それが色や形に表れます。
かけがえのない、一人一人の答え。
それが「椅子」という形になって現れました。


それを、お互いに見合い、
再びたくさん「気付き」を得ます。

その新たな気付き(感動とか憧れ)が、
次の自分の目標、つまり課題になります。

そして、新たな課題解決に向けて、新たなスタートを切っていきます。



図工の時間は、このように、自分自身を常に主体とした
「気付き」「課題発見」「課題解決」「学び」
そして再び新たな「気付き」・・・
という学びの循環が起こっている
一つの学びの体系だと考えています。

私は、このような子供主体の創造的な学習の形を
図工の特権として止めておくのはもったいないと思っています。
むしろ「図工ラーニング」と呼んで、
他教科や他分野に発信していきたいものです。

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一人一人の答えを認め、
一人一人のやり方を尊重する。

一人一人が、明日を、自分で生き抜くために。
Tomorrow Never Knows