2018年12月12日水曜日

4年生 学校に家ができるまで

これは、4年生の子供たちが、学校に家を建てるまでの記録です。

4年生の一人の子の、ふとした一言からはじまりました。

「ねえ、先生! 学校に家を建てよう?」

その時、たまたま近くに何人かの子がいて、
「いいね!」
「二階建てにしてさ、ここにハシゴをつけて・・・」
「じゃあ、さっそく明日からつくり始めよう!」

近くに落ちていた木材を集めてきて、
さっそくつくり始めようとしていた4年生に
「いや、ちょっと、待って!
一応、学校の中のことだから、一言校長先生に
家を建てていいのか聞いてみよう」と提案しました。
「じゃあさっそく明日校長室に行ってみよう」と
4年生はやる気満々。

ところが、話はそんなに単純ではありませんでした。

「学校の敷地は、校長先生の土地ではありません。
昭島市の土地だから、昭島市に許可をもらわないと
建てられません」

しかも、いろいろな年齢の子供たちが使う校庭に建てる以上、
ちょっとしたことで壊れるようではダメ。
いつ台風が来るかもわからない。
いきなり大きな壁にぶつかってしまいました。

そこで、私は、知人の一級建築士に
この事態について伝え、相談に乗ってもらいました。

「建築物は強くないと意味がない。
構造をちゃんとつくらないとだめ」だという。

これは、4年生に直接教えてあげてほしい!
ちょっと4年生に会いに来てもらえないでしょうか?とお願いしました。

フリーで建築士をしている大池さん
なんと、4年生の家づくりのサポートをしてくださることに。

建築士の監督のもと、
安全につくるための約束を守ることを条件に

10月31日~12月7日の38日間という期間
校内に延べ60平米程の土地を借りる許可がおりました。
4年生には、各チームごとに、
契約書を読み合わせた上で、
一人一人にサインをしてもらいました。

しかし、もう一つの壁があります。
木材がなければ当然家をつくることができないのです。
家が建つほどの木材を買うお金はありません。



そこで、解体中の建物や、林業の間伐材など、
何らかの理由で譲っていただけるものや
安く提供してもらえるものを探さなければいけません。

「家の近所で家を解体していたよ!」
4年生からいろいろな情報が寄せられました。

縁あって、ある製材所で、
小屋づくりのために、先月間伐したばかりの
ひのき材が余っているのに出会い、
安く提供していただくことができました。


また図工便りで、保護者のみなさんにお声かけしたところ、
何件ものご家庭から、いらなくなった木材や建材を提供いただくことができ、
なんとか11月までに材料がそろったのです。


こうして、いよいよ家づくりが始まりました。


大池さんが建築の「構造」について教えてくれました。
「建物の骨って、
タテの柱、ヨコの梁、ナナメの筋交いの3つでできているんだよ」
今、鉄筋コンクリートの家が多く、
木造の家の壁や床の中のことを知ることは
難しいですから、これはチャンスです!

そして、チームで話し合いながら設計図を書きました。

その設計図に基づき
大池さんが割り箸をつかった模型で、
具体的なアドバイスをしてくれました。


さあ、木材を校庭に運び出します。
木って、こんなに重いんだね!!

木材を抱えて、校庭と図工室を何度も往復しました。

建築士の大池さんの監修の基、
大人で柱と梁だけはつくっておきました。

もっと家を丈夫にするために、
タテとヨコに対して、
ナナメの筋交いを入れていきます。


使う材料の一つ一つが大きく、
全身で挑まなければいけません。


自分よりもずっと大きなものを相手に

力を合わせながら

みんなの家をみんなでつくっていきました。

木材だけでは足りず、
身の回りにある様々な材料を組み合わせていきました。

居心地よさを考えると、床が必要ですね。

そして、やっぱり壁もほしいですね。




さらに、つくっていると、
2階建てにしたいという家も現れます。

そうなると、
さらに強くしなければいけません。
梁や筋交いを入れていきます。

そして恐る恐る上に乗ってみると・・・

自分たちを支えることができる木の強さを感じます。



2階にも屋根をつけたいな!





もっと素敵な家にしようと、
いろいろな材料を組み合わせていました。

旗も立てて、いよいよ家の完成です。

この家は、なんと滑り台もつけてしまいました!
みんな、設計図に描いたような思い通りの家になったでしょうか?
想像することはできても、つくるって、こんなに大変なんだと
全身で実感したことでしょう。


そして、11月30日
その日から2日間行われた「つつじが丘アートフェスティバル」にあわせて、
4年生の計13棟の家がこ公開されました。



4年生が、その家々を「4年アート村」と名付けてくれて、
看板も立ててくれました。

さあ、アート村に行ってみましょう。
どんな家ができたのでしょうか?



東京都 昭島市つつじが丘2-1-30-30
「洋風ハウス」


東京都 昭島市つつじが丘2-1-30-17
「キャットハウス」


東京都 昭島市つつじが丘2-1-30-16
「〇〇家」


東京都 昭島市つつじが丘2-1-30-26
「フォレストハウス」


東京都 昭島市つつじが丘2-1-30-27
「オーバーハウス」


東京都 昭島市つつじが丘2-1-30-25
「クジラハウス」


東京都 昭島市つつじが丘2-1-30-24
「かおつひや」


東京都 昭島市つつじが丘2-1-30-21
「2階建てハウス」


東京都 昭島市つつじが丘2-1-30-13
「テルデトタワー」


東京都 昭島市つつじが丘2-1-30-22
「シンプルな家」


東京都 昭島市つつじが丘2-1-30-12
「まゆみい別荘」


東京都 昭島市つつじが丘2-1-30-11
「HAPPYハウス」

東京都 昭島市つつじが丘2-1-30-14
「フェラーリ」

アートフェス当日は、たくさんの方が
村に遊びに来てくれました。

しかし、契約期間は12月7日まで。
せっかくつくった家を満喫したいと、
完成した家でお弁当を食べました。















この後、12月12日
建築士と解体のプロである大道具さんの力を借りながら、
子供たちの手で、13棟すべての家を3時間で解体しました。
***
家を建てるという大がかりな活動を、
4年生の子供たちがするというのは、
ちょっと無謀ではないか?
年齢や力に合っているだろうか?
本当に安全にできるだろうか?
この授業を実施するにあたり、
担任と専科、管理職の間で、数ヶ月かけて何度も議論をしました。
一度は実現が難しいとも考えました。

しかし、最後までやりたいと言って大人を動かしたのは
4年生の子供たちでした。
実は、途中でいくつもトラブルやアクシデントがありました。
チームのメンバーと意見が合わずに、
何度もけんかをしたりぶつかったりする場面もありました。
意見の食い違いから、「じゃあこんな家壊しちゃえ」と
ムキになって、途中まで解体してしまったチームもありましたが、
みんなで力を合わせて、つくり直しました。

安全に活動するために守らなければいけないルールを破り、
契約違反をしてしまったため、
家が壊れ、けがをしてしまったチームもありました。

つくりはじめたのも自分たち。
チームを決めたもの自分たち。
そして壊してしまったのも自分たち。
だから、自分たちでどうにかしなけれないけいない。
最後まで、本気の望んだ家づくりの活動でした。

***
建築という大がかりなものづくりを通して、
図工の活動を越え、
チームで協働することの楽しさと難しさ、
契約を守ることの大切さなど、
たくさんのことを学ぶ時間になりました。

私たち大人にとっても、この活動はたくさんの学びがあったと思っています。
もちろん、準備にも片付けにも、手間がかかりますが、
よりアクチュアル(身体的・現実的)な活動を通して、
よりオーセンティックな(本物の)体験をすることが、
深い学びをつくるのだとという、大きな発見がありました。


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